この記事について
この記事は、淡水二枚貝(ドブガイ)の餌用に珪藻を自宅で培養している管理人「ネクラ」の、約2年間にわたる試行錯誤の記録です。専門機関の研究者ではなく、あくまで趣味として二枚貝の飼育・繁殖に取り組んでいる立場から書いています。
培養環境は水温・光量・水質など条件によって結果が大きく変わりますので、同じようにやってみても必ず同じ結果になるとは限らない、ということは先にお伝えしておきます。
珪藻の培養を始めてから、もうすぐ2年になります。正直に言うと、最初の1年半はほとんど失敗の連続でした。緑藻に乗っ取られたり、水が腐って全滅させたり……。
今回ようやく「これなら続けられそうだ」と思える方法にたどり着いたので、同じようにドブガイやカワニナなど淡水生物の餌に珪藻を使いたいと考えている方の参考になればと思い、記事にしています。
珪藻の培養環境をお伝えいたします
淡水二枚貝(ドブガイ)の餌にする目的で、珪藻を自宅で培養しています。今のところは、なんとか安定して増やせるようになってきました。
容器の壁面にびっしりと張り付いている茶色っぽいものが、増えた珪藻です。写真だと分かりにくいかもしれませんが、指でこすると茶色い膜がスルッと剥がれるくらいまで育っています。これを2日に1回のペースで容器からこすり取り、250mlほど珪藻を、現在飼育しているドブガイの水槽に投入する、というのが今の流れです。
珪藻を安定して増やせるようになるまで、実は丸2年近くかかりました。最初のうちは「藻類を増やすだけなんだから簡単だろう」と軽く考えていたのですが、これが思った以上に難しくて、何度もやり直すはめになりました。
飼育環境がちょっとでも変わると、あっという間に緑藻(緑色のコケ)が茂ってしまったり、水そのものが腐って使えなくなってしまったりするんです。最初の頃は、せっかく数週間かけて増やした珪藻を、たった1日でダメにしてしまったこともありました。
今のところの管理条件は、水温がだいたい12〜15度くらい、そこにライトを当てて育てています。pHは7前後を目安にしていますが、この数値も「絶対にこれでなければいけない」というものではなく、私の環境でうまくいっている数値、というくらいに捉えていただければと思います。
もう少しコンスタントに、狙ったタイミングで増やせるようになったら、いずれは販売も考えてみたいと思っています。ただ、珪藻はそう簡単に大量増殖してくれるものではなく、私自身これまで何度も痛い目を見てきました。それでも、ここ最近はようやく「うまくいっている」と言える状態が続いています。
下記が実際の珪藻培養の様子を撮影した動画です。壁面にびっしり張り付いている様子が分かるかと思います。
珪藻培養の様子(動画)
使っている機材はライト、培養用の入れ物、水温計、エアレーションの4点です。珪藻の種になる株は、購入したものではなく、近所の水路で自然採集したものを使っています。
珪藻とは何か、なぜ二枚貝の餌に向いているのか
珪藻は、細胞の周りをガラス質(ケイ酸)の殻で覆われた植物プランクトンの一種です。水産の分野でも、貝類やウニなどの種苗生産(稚貝・稚仔を育てる工程)の際の餌として、実際に使われている生物です。
沖縄県水産海洋技術センターの資料でも、ウニや貝の種苗生産用の餌料として天然珪藻群を培養する方法が紹介されており、養殖の現場でも珪藻は餌として一定の評価を受けているようです(出典:沖縄県水産海洋技術センター「ウニや貝の種苗生産餌料として有効な天然珪藻群の培養方法」)。
私は研究者ではないので専門的な栄養価の分析まではできませんが、実際にドブガイの水槽に珪藻を投入すると、貝が水管を伸ばして餌を取り込もうとする様子が観察できます。これを見て「ああ、ちゃんと餌として認識してくれているんだな」と感じています。
ちなみに、水産系の研究資料を見ていると、珪藻の培養にはメタケイ酸ナトリウムのようなケイ酸源を栄養塩として添加する方法が使われることが多いようです。
珪藻は殻の材料としてケイ酸を必要とするため、水の中にケイ酸が枯渇すると増殖が止まってしまう、という性質があるようです(出典:水産研究・教育機構関連資料)。家庭での培養でここまで厳密にやる必要はないと思いますが、「珪藻にはケイ酸が必要」という点だけは、覚えておいて損はないかもしれません。
培養に使っている機材一覧
家庭で珪藻を培養するにあたって、私が実際に使っている機材は、それほど大掛かりなものではありません。以下の表にまとめてみました。
| 機材 | 用途 | 私の環境での備考 |
|---|---|---|
| LEDライト | 光合成を促すための光源 | GEXのクリアLEDパワー3を使用。水草用の照明でも代用できています |
| 培養容器 | 珪藻を張り付かせて増やす入れ物 | 透明なプラスチック容器。壁面の面積が広いものの方が増えやすい印象です |
| 水温計 | 水温の管理 | 12〜15度をキープできているか毎日チェック |
| エアレーション(エアーポンプ) | 水中の酸素供給・水の停滞防止 | 弱めのエア量でも十分機能している印象です |
| pH測定用の試験紙または測定器 | pHの目安を把握するため | 7前後を維持できているかの確認用 |
このほかに、種となる珪藻そのものも必要です。私は自然採集した珪藻を種株として使っていますが、購入できる培養株を使う方法もあります。
培養条件(水温・光・pH)早見表
私が現在の環境でうまくいっている条件を、簡単な表にまとめました。あくまで私の環境での実例であって、絶対的な正解ではないという点はご理解いただければと思います。
| 項目 | 私の環境での目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 水温 | 約12〜15度 | 高くなりすぎると緑藻に乗っ取られやすい印象があります |
| 光(ライト) | 常時〜長時間点灯 | 直射日光ではなくLEDライトを使用 |
| pH | 7前後 | 大きく傾くと珪藻の調子が落ちるように感じています |
| 給餌(水槽への投入)頻度 | 2日に1回、約250ml | ドブガイ水槽1本分の目安 |
| 培養開始からの安定までの期間 | 私の場合は約2年 | 試行錯誤の期間を含む。条件が合えばもっと早い可能性もあります |
2年間の2つの失敗談
珪藻培養を始めてからの2年間、正直なところ失敗の方が多かったです。ここでは特に印象に残っている失敗を2つ、紹介させてください。
1つ目の失敗
緑藻に乗っ取られてしまった失敗です。飼育環境を少し変えた直後、数日で容器の壁面が緑色一色になってしまったことがありました。
せっかく茶色く珪藻が育っていたのに、気づいたときにはすっかり緑藻に覆われていて、結局その株は一からやり直しになりました。緑藻と珪藻は見た目が似ている時期もあるので、色の変化にはかなり神経質にチェックするようになったのは、この失敗があったからです。
2つ目の失敗
水そのものが腐ってしまった失敗です。エアレーションを一時的に外していた時期があったのですが、そのタイミングで水が濁り、独特のにおいが出てきてしまいました。
結果的にその容器はすべて廃棄することになり、種株からやり直しになりました。今思えば、酸素供給を止めてしまったことが大きかったのだろうと感じています。
こうした失敗を経て、今は「環境をむやみに変えない」「エアレーションを絶やさない」という、当たり前といえば当たり前のことを徹底するようになりました。
増えた珪藻の使い方(給餌の手順)
増えた珪藻を実際にドブガイの水槽に入れるまでの流れを、簡単にまとめておきます。
まず、容器の壁面に張り付いた珪藻を、スポンジや指の腹などで軽くこすり落とします。強くこすりすぎると容器を傷つけてしまう場合があるので、私はいつも力加減に気をつけています。
こすり落とした珪藻は水と一緒に濁った状態になるので、それをそのまま計量しながらドブガイの水槽に投入しています。だいたい250mlくらいを目安にしていますが、水槽の大きさや貝の数によって、この量は調整した方がよいと感じています。
投入後は、ドブガイが水管を伸ばして餌を取り込む様子を観察するようにしています。この様子を見ることで、珪藻がちゃんと餌として機能しているかどうか、ある程度の判断材料にしています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 珪藻の培養は誰でも簡単にできますか?
私自身、安定して増やせるまでに約2年かかりました。環境(水温・光・水質)が少し変わっただけで緑藻に乗っ取られたり、水が腐ったりすることがあるので、決して簡単とは言い切れないというのが正直な感想です。ただ、根気強く続ければ、私のような素人でも安定させられる可能性はあると感じています。
Q2. 珪藻と緑藻の見分け方はありますか?
私の経験では、珪藻は茶色っぽく、緑藻は名前の通り緑色をしていることが多いです。ただし、育つ時期や環境によって色味が近くなることもあるので、色だけで判断せず、こまめに観察することをおすすめします。
Q3. 珪藻の種株はどこで入手すればよいですか?
私は近所の水路で自然採集したものを種株として使っています。購入できる培養株を扱っている業者もあるようですので、採集が難しい環境の方は、そちらを検討してみるのも一つの方法かもしれません。
Q4. 水温や光の条件は必ずこの通りにしないといけませんか?
いいえ、記事内で紹介した水温12〜15度、pH7前後という数値は、あくまで私の環境でうまくいっている条件です。環境によって最適な条件は変わる可能性がありますので、様子を見ながら調整することをおすすめします。
Q5. ドブガイ以外の生き物の餌にも使えますか? 私自身はドブガイへの給餌を目的に培養していますが、珪藻は他の淡水二枚貝や巻貝、稚魚の餌としても活用されている例があるようです。生き物ごとに適した餌の量や頻度は異なる可能性があるので、様子を見ながら試してみるのがよいかもしれません。
まとめ
珪藻の培養は、始めてみると想像以上に奥が深く、私自身2年近くかけてようやく「安定してきた」と言える段階にたどり着きました。緑藻に乗っ取られたり、水が腐ってしまったりと、失敗も数え切れないほど経験しています。
もし同じように淡水二枚貝や他の生き物の餌として珪藻を活用したいと考えている方がいれば、この記事の内容が少しでも参考になればうれしく思います。焦らず、環境をこまめに観察しながら進めていくのが、遠回りに見えて実は一番の近道かもしれません。
参考情報
- 沖縄県水産海洋技術センター「ウニや貝の種苗生産餌料として有効な天然珪藻群の培養方法」(https://www.pref.okinawa.jp/fish/kenkyu/hukyu-data/data16/129-130.pdf)
- 水産研究・教育機構「市販浮遊珪藻を元株とした冬季低コスト大量培養法」(https://www.fra.go.jp/home/kenkyushokai/book/fish_tech/files/090101.pdf)



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